製作実績
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Aroma Shooter® Wearable 2
XR体験を加速させる
香り制御デバイス
技術躍進によって現実世界と仮想世界の境界が少しずつ溶け合いはじめている現代。XR(クロスリアリティ)という言葉を耳にする機会が増えてきたかもしれません。そんな最先端の分野に向けて「香り」をキーワードにアプリケーションとデバイス開発を進めているのが、株式会社アロマジョイン様です。代表製品の『Aroma Shooter®(アロマシューター)』は、映像や音声に連動しながらシーンに応じて複数の香りを瞬時に切り替えることができる指向性嗅覚ディスプレイ(Directional Olfactory Display)。香りを軸とした新たなプロモーションやエンタテイメント技術として、世界中から期待されています。
2022年、オトコシのwebサイトに入った一件のお問合せから今回のプロジェクトははじまります。「新製品としてAroma Shooter®のウェアラブル版の開発を検討しているので手伝って欲しい」。嬉しいことに以前別のプロジェクトでご一緒した弊社石井のことを覚えてくださっていて、今回はぜひ一緒に仕事がしたいとお声がけいただいたのでした。
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クライアント
株式会社アロマジョイン -
設計・製造
デザインオトコシ株式会社
どうせ組むなら
期待を超えてくれる仲間と
あらためてお話をうかがうと「これまで相談していた会社では、こちらが依頼した内容がそのまま形になる。新分野にチャレンジする弊社としては、意見やアイデアをどんどん出し合いながら、予想や期待を超えたものづくりを一緒になって進めて欲しい」とのことでした。また、担当者が変わったことで、会社の方針やプロジェクト背景を何度も説明しなければならず、コミュニケーションコストがかかるというお悩みも抱えていました。
お任せください!悩むまでもなく二つ返事で参加を希望したオトコシ。私たちの強みは能動的な開発です。どんな案件でも設計と意匠デザインの両面から議論を行い、製品によっては試作前の提案段階から3Dプリンターを使って原寸モデルを作成することもあります。実際にものがある状態の方が議論が深まり、より良い製品ができると考えているからです。お客様からの詳細な仕様を待って検討をはじめるのではなく、先回りしてこちらからご提案する。オトコシのスタイルを十二分に発揮するぞと意気込みながら、プロジェクトは進んでいきました。
テストと課題改善を
繰り返す取り組み
最先端分野の未来を切り開くチャレンジングな製品を目指して進んだ今回のプロジェクト。Aroma Shooter® Wearable は「身に着ける嗅覚ディスプレイ」という、いままでにないデバイスです。使用用途もVRやゲームをはじめ多様なシーンが想定されます。だからこそ、スタート当初からトライ&エラーを繰り返しながら完成を目指していくことが求められました。
2022年に開発したVer.1は、毎年アメリカで開かれる世界最大規模のデジタル関連の展示会であるCES(Consumer Electronics Show)に2023年1月に出展。次世代型デバイスとして大きな注目を集めましたが、同時にさまざまな改善点も見つかる結果となりました。会場で出たリアルな声を整理すると、検討を進めるべき4つのポイントが見えてきました。
1_未作動状態でもカートリッジの機密性を高めたい
2_ウェアラブルデバイスとしてもっと軽量化を図りたい
3_身に着ける人の体型や装着方法に影響されない最適な噴射角度を模索したい
4_各カートリッジにどのアロマをセットしたかアプリで認証できる機能を付けたい
この課題改善を目指して、2023年にVer.2の設計&デザインが進んでいきました。
能動的な提案を繰り返して
最適化を目指す
まずは課題解決に向けた仕様検討を進めることに。あらためてVer.2の製品コンセプト、搭載する機能、ターゲット重量、電池容量、内蔵部品の配置やメンテナンス性など多角的な視点から方針を策定していきます。
お客様のご要望をもとに仕様を固めるケースもありますが、今回は「お互いに意見を出し合いながらより良いものづくりを目指す」ことを共通目標に、会議の機会を多く設け、何度も議論を重ねながら仕様を策定することにしました。特に製品重量や可動部の仕様に関しては話し合いや図面では共有が難しいので、自主的に簡易試作を作成したうえで実際の装着感を確認・評価を重ねて理想型を模索していきました。
なかでも特に課題になったのがカートリッジ機構の再設計です。権利化を検討中のため詳細はお伝えできませんが、カートリッジの内部構造や香りを拡散させるファンの設計に関しては何度も改良を行うことになりました。3Dモデル上で何度も全体像を把握しながら、体型やデバイスの装着方法に左右されない最適な噴射角度を探っていきます。ここで重要になってくるのが意匠デザインとの整合性。機能設計を優先してしまうと、どうしてもデザイン面で制約が生まれてしまいます。一般的にものづくりの過程では設計とデザインが別部門で進行することが多く、完成に向けてどこかを妥協するケースが往々にしてあります。ここでオトコシの本領発揮!設計とデザインをセットで捉え、議論を重ねながら最適化を目指していきます。
アロマジョイン様とも都度協議を行いながら、3Dモックを作る→改良するを繰り返していきました。タイムリーな意見交換をもとにオトコシ側で製品のクオリティをどんどん高めていく。まさに当初ご要望いただいていた「意見やアイデアをどんどん出し合いながら、予想や期待を超えたものづくりを一緒に進める」が実現できたプロジェクトでした。
そして完成したAroma Shooter® Wearable Ver.2。機能課題を克服しながらも、見たこともない次世代のウェアラブル・デバイスとしてのデザインを兼ね備えた製品は、満を侍して2024年1月に再びCESへの出展を果たしたのでした。
Voice
お客様の声と小噺
ただし、プロジェクトはこれで終わりではありません。2回目のCES出展で生まれた新たな課題解決やアイデアの実現に向けて、今後もさらなる改良を続けていくことになります。どこまでも泥臭く、粘り強く、お客様と共に。オトコシの挑戦もまだまだ続いていくのでした。
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世の中には、頼まれた仕事を充実に行う方々はたくさんいらっしゃると思いますが、頼まれた仕事以上の顧客が喜ぶ姿を思い浮かべながらプラスαの仕事ができる方は、それほど多くないと思います。
私自身、本プロジェクト以外にも、特に仕事そのものに対する姿勢に関して、非常に多くのことを藤岡さんと石井さんから学ぶ良い機会であり、身も持って体験させてもらいました。
この場を借りて、改めて心より感謝申し上げます。本当にありがとうございました!!アロマジョイン代表取締役社長 金東煜様
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実績ページを設けるにあたりドンウク様から本件についての寄稿をご依頼しました。するとアツいアツいメッセージをいただきました。上記のコメントは一部抜粋したものです。
全文はコチラ。是非御覧ください。 -
ドンウクさんを中心としたアロマジョインの皆さんは意欲的で常に熱量が高い方々です。その前向きな姿勢に感化され、我々ものめり込むように取りくむことができました。とてもポテンシャルの高いテーマだと感じます。更なる進化にも協力できれば嬉しく思います!
デザインオトコシ株式会社 石井
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0.1mm単位での調整を何度も繰り返し、課題を一つずつクリアしていく作業は相当根気が必要になりました。過去実績や経験から最適解は必ずあると信じ、無事納品できたことで改めてご依頼頂いた方々への感謝の気持ちに繋がっております。
デザインオトコシ株式会社 藤岡