製作実績

Works

S C R O L L

03

E-HEAT

  • #意匠デザイン
  • #機構設計
  • #試作検証
  • #量産
  • #部品調達

業界の常識を覆す
ハイエンドな加熱試験器

消防設備士という仕事をご存知でしょうか。おそらく一度は目にしたことがある、火災報知器などの工事や点検を行う人たちです。そんな消防設備士が多数在籍するアークリード株式会社様は、現場の消防設備点検業務をはじめ、報告書のソフトウェア開発や設備機器・点検用器具の製造などを幅広く手がける業界のプロ集団です。

以前から長いお付き合いがある代表から「長年考えていたアイデアを形にしたい」とご相談をいただいたのが、プロジェクトの始まりでした。聞けば「長年あたためてきた企画を形にしたい。究極の試験器をつくりたい!」とのこと。その熱い思いとチャレンジ精神に突き動かされ、気がつけば自然と設計とデザインの検討をはじめていたのでした。

PROJECT MEMBER

※プロジェクトメンバーの一部のみ掲載しております。
  • クライアント
    アークリード株式会社

  • 設計・製造
    デザインオトコシ株式会社

CHAPTER1 ご依頼の経緯

使っていて気分が上がる
作業道具がいい

「現場の作業員が持っていて気分が上がる、意匠性の高いデザインにしたい」「作業員の声を反映した使いやすいものがいい」。代表の頭のなかにアイデアはたくさんあるものの、デザインと機能性が両立した試験器、その詳細な仕様は決まっていませんでした。仕様書はもちろん、ご要望をまとめた書面も、参考になるような製品の写真やイラストのご提示もありません。

ですが、そんな漠然としたご依頼でも形にするのが私たちオトコシの強みであり、腕の見せどころです。とにかく話を聞く。ポンチ絵を提案する。それをもとに、さらに話を聞く。設計とデザインの両面から社内で議論する。そしてまた提案する。お客様との対話を重ねながら方向性を模索し、イメージの齟齬を徹底的に無くしていく。実際の細かな設計やディテールのデザインに取り掛かる前に、このやりとりを4~5回繰り返し行うことになりました。工数も時間もかかるし無駄なのでは?いえいえ、ビジネスとデザインの最適化を目指すオトコシの仕事としては必要な過程です。時間はかかったとしても、とにかくお互いに納得いくものを、理想の製品を目指してプロジェクトは進んでいきました。

CHAPTER2 提案〜製作開始

道具としての強度と
ユーザビリティの最適化

デザインの良さはもちろん、消防設備士が現場で使いやすいものを目指したい!アークリード様の現場スタッフから集めた要望を簡単にまとめると、設計を検討するうえで注意したいふたつのポイントが見えてきました。

ひとつ目が「試験器のヘッド部分の構造」です。よくある試験器はヘッド部分の形状が大きく、アームの可動によって自由に動く構造になっています。これは天井の火災報知器が目視できる場合は問題ありませんが、家具が設置されていて天井との隙間が狭い場所や、押入れの天井に火災報知器がある場合に上手く試験器をセットしづらいという声があがっていました。そこで新製品ではヘッド部分の厚さを極力薄くし、角度を段階的に可変できる設計をご提案しました。ただし、試験器として機能させるには当然ながらヘッド部分に加熱のための機構や配線が必要になります。試行錯誤の結果、配線の種類や処理の仕方、コネクタの部品を工夫することで、業界最薄の5cmまで薄く、軽量化することに成功しました。さらに、ヘッド部分をアタッチメント式にすることで、将来的に別方式の試験器のヘッドの付け替えにも対応できるように設計しました。

POINT1:試験器のヘッド部分の構造

もうひとつのポイントは「ロッドの長さ調整」です。火災報知器が取り付けられている場所や高さは様々なので、作業シーンに応じてロッドを延長することで、長さをカスタマイズできるジョイント式の仕組みを検討することに。考えたのは、単純にロッドを継ぎ足して延長できるだけにとどめないこと。検知器はあくまで道具として、作業現場でストレスなく安全に使えることが求められます。ジョイント部分を正しい方向で差し込まないと固定されない構造にすることで、安全性を担保できるように設計を進めました。また、ベンジンを熱源とする従来製品と違い、新製品は環境にも配慮したバッテリー式の採用を検討していたこともあり、ロッド部分に特注のリチウムイオン電池を内蔵する設計にしました。

POINT2:ロッドの長さ調整

CHAPTER3 試作

試作トラブルを乗り越えて

試作段階で苦労したのは重さと強度のバランスでした。ロッドを長くすれば当然、機械部分のヘッドに負荷がかかります。ヘッド角度を可変仕様にしている為、強度面は設計当初からの懸念ポイントでもありました。とはいえ、意匠面も機能面も妥協したくはありません。社内の3Dプリンターを使って何度も設計・試作・検証を繰り返しながら、最適なバランスを模索していきます。最終的にはアークリード様から使用者視点のアドバイスをいただだいたおかげで打開策を見出し、強度・軽さ・意匠性の最適化を実現することができました。

そうして製品としての形がある程度決定し、展示会への出展検討を始めたのですが、ここにきて大きな問題が発生します。ヘッド部分の安全性において消防庁の指摘がはいるなど想定外の課題が発覚!ヘッドのカップ部分を再設計することになったのです。

新規設計による不具合や急な材料変更など、ものづくりにトラブルはつきものです。ただ、世の中の情勢やプロジェクトの要件がいくら変わろうとも、お客様と一緒に粘り強く仕事を進めていくのがオトコシの流儀。世の中にないものをつくるためなら、生みの苦しみも楽しんで乗り越えていきたい。パートナーである複数のエンジニアや試作メーカーと連携しながら、製品化に向けて再スタートを切りました。

関節部の検証用試作(一部)

CHAPTER4 量産〜製品化

粘り強く泥臭く
1年越しのリリース

展示会も無事に終了し初期受注もある程度見込めたことで、いよいよ製品の量産化を検討していきます。製品の部品点数は約120点、素材も樹脂成形品やアルミ切削加工品、パイプにキーシートなど部品によってさまざまです。アークリード様はファブレスなので、今回のような新規テーマにおける部品の製造や調達など専門の部門は未決定でした。そこで、今回は私たちが量産化のサポートまで一貫して行うことなりました。

試作品として動く製品をつくるのと、品質を保ちながら量産するのとでは、違った視点での管理体制やノウハウが必要になってきます。製品をいざ量産しようとした時、金型の立ち上げや調整の段階で「量産不可能」と判断され、再設計になることもしばしば。また、大量の製品を同等の品質でつくるには、部品入手のしやすさや組み立ての機構、消耗に耐える素材の選定など考慮すべき要素が膨大に出てきます。ここに想定以上の時間や管理・調整コストがかかる場合が多く、よく「量産の壁」と言われたりします。

オトコシでは試作段階から量産を見据えた設計とデザインをモットーにしています。また、ファブレスの設計・デザイン会社ですが、これまでの経験やノウハウから国内外を問わず信頼できる工場とのネットワークがあります。今回は数量・品質・コストバランスを考慮したうえで、既製品に関しては国内メーカーから調達し、オリジナル部品の製作は中国の協力工場と進めることにしました。

従来は中国など海外での金型立ち上げ~部品製作の際は必ず現場に立ち合っていましたが、コロナ禍だったこともありリモートでのやり取りを余儀なくされました。量産試作段階で樹脂成型品にどうしてもクラックが入ってしまう問題が発生しましたが、コミュニケーションを密にとりながら金型修正や成形条件の変更を依頼し、最終的にアニール処理(残留応力を取り除く熱処理)を施すことで解決。結果、面数20ある金型でしたが、金型立ち上げから4ヶ月、T3で1stロットの完成・納品へとこぎ着けることができました。

コア金型(一部)

並行して、アークリード様の購買部門として国内の各種メーカーと調整しながら既成部品を調達していきました。部品点数が多いため、メーカーや型番・納期を厳密に管理しながら進める必要がありましたが、こちらも細やかな調整を続けながらスケジュール通り進行していきました。

泥臭く、粘り強く、お客様とともに。プロジェクト当初の販売予定から遅れること1年。ヘッドは業界最薄5cm、最短60cmから最長710cmまでのカスタマイズ式ロッドを備えた、新時代のバッテリー式加熱試験器がついに完成したのでした。

Voice

お客様の声と小噺

法規制や新型コロナなど外部環境の変化もあり、機械設計と意匠デザインの両方で試行錯誤の連続でしたが、粘り強くお客様と一緒に商品開発を進める姿勢を高く評価いただけました。また、量産に向けた国内外の工場に対する部品調達や試作調整など、最適化を合言葉にオトコシの強みを活かしてワンストップでお手伝できたことで、単なる設計やデザインの外注先ではなく「ものづくりのパートナー」としての関係を築くことができました。初回ロットの約半数が予約販売できたとのことでパートナーとして大変うれしく感じています。

  • 藤岡さんとは長いお付き合いになりますが、今回も難しい要求に対してどんな状況でも寄り添ってもらえました。
    意匠性においては特に満足しています。オトコシさんには業界に必要とされる品質(特に強度面)の理解を深めていってもらい、今後も共に良い商品を世に出していきたいと思います。

    アークリード株式会社 代表取締役 尾阪様

  • モジュール式でありつつ強度と軽量さの両立が必要なプロダクト開発は難航しましたが、よい経験にさせていただきました。行政機関からの指摘などで仕様も流動的でしたが、無事発売に至ることができて喜ばしいかぎりです。

    デザインオトコシ株式会社 石井

  • 代表様の情熱とアイデアに何度も助けられました。弊社事務所の設備点検でこの商品が見られる日を心待ちにしています。

    デザインオトコシ株式会社 藤岡